大阪ナイトカルチャー
提言
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宮本亜門氏 舞台が人を豊かにする 演出家:宮本亜門氏
「ミュージカルやオペラってどのように見たらいいですか?」とよく聞かれます。これってちょっと不思議な質問なんです。まるで、世の中に「正しい見方」が存在しているみたいじゃないですか。ピカソだって、最初にタイトルを見て欲しいんじゃないと思うんです。まず絵を見て何を見る人に感じてもらえるかが大切。世界中のどこに行ったって、ミュージカルやオペラの正しい見方があるわけじゃありません。
  「INTO THE WOODS」という舞台で、中高生の貸切りの回がありました。この作品は、テーマが深くて難しいと評されている作品です。でも、若い彼らが、公演中で一番盛り上がってくれました。難しいなんて微塵も感じずにゲラゲラ笑って。「難しい」って勝手に決め付けているのは大人の方で、内容がわからなくても、まずは感じてくれれば理解も早いはずなんです。
 僕は、内容がわからないのなら、わからないでいいと思います。最初勉強することもひとつの方法だけれども、変に勉強していくことが必ずしもいい方法だとは思いません。これは、歌舞伎や文楽など古典芸能にも言えることではないでしょうか。役者の動きひとつひとつに感動することもあれば、人形を動かす黒子の技術に驚くこともあります。浄瑠璃の言葉に興味を持つ人もいるでしょう。人の感性は千差万別であり、まずは舞台そのものを感じていただきたいと思います。「勉強しに行く」とか「難しいものを見る」という固定概念を捨て、とにかくその世界に浸ってみる楽しさを体感してほしいのです。

 「アミューズメント・パークは楽しいけれど、舞台を見にいくのは面倒」という人も多くいます。でも、「楽しむ」ということにもいろんな表現があるのを忘れないでほしいです。なかでも今まで知らなかったことに触れ、自分の知識を増やすことや、自分の考え方を深めるということは、人生における大きな楽しみのひとつだと思います。それを可能にするのが舞台や芸術です。ただ発散するだけ、笑うだけが楽しみとも限らない。人生そのものを存分に楽しむ。あらゆる味わいを、いろんなものを見たり感じたりしながら、自分の人生にプラスにする、そう考えるともっと色々な種類の舞台や芸術が楽しめるのではないでしょうか。

 僕は舞台には、舞台でしか味わえない楽しみがあるのだと信じています。劇場に足を運ぶことが特別な時間と思えることができれば、それは生きていく上で、実に贅沢な、いろんな経験を楽しんでいる瞬間になりえます。是非このような観点から大阪のナイトカルチャーを楽しんでいただけたらと思います。